こんな声をよく耳にします。
「飲みに行くと部下がいろいろ話してくれるのに、オフィスでは当たり障りのないことしか言わない」
管理職の皆さん、なぜこのような現象が起きるのか、考えたことはありますか?
なぜ「飲みの席」では本音が出るのか
飲みの席で部下が本音を話す理由は、実は環境要因が大きく関わっています。
物理的・心理的な距離の変化
お酒の場では、上司と部下が横並びや斜め向かいに座ることが多く、対面式のデスク越しよりも心理的な圧迫感が軽減されます。視線が正面からぶつからないだけで、人は安心して話せるものです。
役割からの解放
「仕事モード」から「プライベートモード」へのスイッチが、心の鎧を脱がせます。
ネクタイを緩め、グラスを傾ける。その行為自体が「今は評価されない時間だ」という安心感を生み出します。
時間の余裕
飲みの席には「早く結論を出さなければ」というプレッシャーがありません。
雑談から始まり、自然な流れで深い話題へ。この時間的余裕が信頼関係を育みます。
酔いで心のタガが外れる
あなた自身、酔うことで言いにくいことを言いやすくなるでしょう。
酔いが心のタガを外してくれるからです。
しらふのときには言えないことも言えてしまう。それがお酒の力です。
でも、本当にそれでいいのでしょうか?
飲みニケーションにはいくつかの問題点があります。
- お酒を飲めない、飲みたくない人は不利になる
- プライベート時間の侵食でワークライフバランスが損なわれる
- 記憶が曖昧になり、重要な約束が守られないことも
- アルコールハラスメントのリスク
- 翌日の仕事効率の低下
何より、「飲まないと本音が聞けない関係」は、健全な組織とは言えません。
普段の面談で心を開いてもらうための5つのコツ
1. 環境設定を見直す
デスクを挟んで対面するのではなく、90度の角度で座る配置にしましょう。
できれば会議室の隅のテーブル席など、カジュアルな雰囲気の場所を選んでください。
パソコンのモニターを閉じ、スマートフォンは裏返しにする。
「あなたに集中しています」というメッセージが伝わります。
2. 時間に余裕を持つ
「10分だけ」という面談では、本音は出てきません。
最低でも30分、できれば1時間の枠を確保し、「急いでいない」ことを態度で示しましょう。
途中で時計をチラチラ見るのは厳禁です。
3.聴く比率を8割に
管理職は「話す」ことに慣れていますが、面談では「聴く」ことが主役です。
部下が話している間は、相槌を打ちながら最後まで聞く。
途中で遮ったり、すぐに解決策を提示したりしないでください。
「それで?」「もう少し詳しく聞かせて」という言葉が、部下の心を開く鍵になります。
4. 非言語コミュニケーションを大切に
言葉だけでなく、表情、姿勢、声のトーンが信頼を生みます。
- 柔らかい表情を保つ(威圧的な顔つきになっていませんか?)
- 体を部下の方に向ける(パソコンに向かったままではありませんか?)
- 相手のペースに合わせた話し方(早口で圧倒していませんか?)
ミラーリング(相手の動作を自然に真似る)も、無意識の信頼感を生み出します。
「評価者」の顔を一旦脇に置く
最も重要なのは、面談の間だけでも「評価する上司」ではなく「共に考えるパートナー」になることです。
部下が本音を話せないのは、「この発言が評価に影響するのでは」という不安があるからです。
だからこそ、面談の冒頭で「今日の話は評価には関係ない。率直に話してほしい」と明言することが効果的です。
継続的な信頼関係の構築
一度の面談で全てが変わるわけではありません。大切なのは継続性です。
定期的な1on1ミーティングを設定し、「あなたのことを気にかけている」というメッセージを行動で示し続けてください。
小さな約束を守ること、話してくれたことを覚えていること、そのフォローアップをすること。
こうした積み重ねが、「この人には話しても大丈夫だ」という安心感を育てます。