ウェルビーイング経営って何?

ウェルビーイングとは?

「ウェルビーイング(Well-being)」とは、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあることを指します。単に病気や不調がないというだけでなく、仕事に意味を感じ、人間関係が良好で、自分らしく働けている状態のことです。

 

この言葉があちらこちらで使われるようになり、最近では産業界においても「ウェルビーイング経営」という言葉が広まってきました。

これは、社員のウェルビーイングを高めることを経営の重要な柱として位置づけ、組織としての持続可能な成長を目指す考え方です。

健康経営のさらに一歩先を行く考え方といえるでしょう。

なぜ今、ウェルビーイング経営が注目されているのか?

背景にあるのは、職場のメンタルヘルス問題の深刻化です。

厚生労働省の調査では、仕事に強いストレスを感じている労働者は全体の約5割に上るとされています。メンタル不調による休職者数も増加傾向にあり、組織としてこの問題に向き合うことが、以前にも増して求められるようになっています。

 

さらに2023年には、上場企業を対象に人的資本の情報開示が義務化されました。「人を育て、活かす取り組み」が、企業価値を測る指標として公式に認められた形です。こうした制度的な動きも、ウェルビーイング経営への関心を後押ししています。


ウェルビーイングと生産性の関係

社員を大切にし、社員の健康と幸福を守ることと、業績は本当につながるのか? そんな疑問をお持ちの方も多いと思います。

 

オックスフォード大学セイードビジネススクールのベレット、デ・ネーヴ、ウォードらによる研究(2019年)では、英国の通信会社のコールセンター社員約1,800人を対象に6ヶ月間追跡調査を実施しました。その結果、幸福度の高い週には生産性が約13%高くなることが示されました。

 

また、米国ギャラップ社が世界約200万人を対象に行った調査では、仕事へのエンゲージメントが高い社員(熱意あふれる社員)の多い組織は、そうでない組織に比べて生産性が21%高く、離職率は59%低い、という結果が出ています。

 

「社員が元気に働けること」は、組織のパフォーマンスにも直結しているのです。しかしながら、同社の調べによると、日本でエンゲージメントが高い社員は、わずか6%です。日本のGDPは低下していますが、そのこととこのデータには関連があるのではないでしょうか。

見えにくい損失「プレゼンティーイズム」

職場のウェルビーイングを考えるうえで、知っておきたい概念があります。「プレゼンティーイズム(Presenteeism)」です。

 

プレゼンティーイズムとは、体調不良やメンタル不調を抱えながらも出勤しており、パフォーマンスが低下している状態のことです。欠勤や休職(アブセンティーイズム)とは異なり、出社しているため、不調が見えにくいのが特徴です。

経済産業省の「健康投資管理会計ガイドライン」によると、プレゼンティーイズムによる損失は、アブセンティーイズムによる損失の約3〜4倍に上るとされています。「うちの社員は休んでいないから大丈夫」とは言い切れないのです。


ウェルビーイング経営で求められること

ウェルビーイング経営は、福利厚生の充実や制度を整備すればいいわけではありません。それも大事ですが、根幹は、職場環境の改善です。

 

心理的安全性が高く、社員が自分の意見を自由に言える環境を作ること。仕事の意義を再確認し、裁量度を高めること。これらが、「働きがい」を高め、社員の幸福度を高めます。

さらに、管理職のウェルビーイングが高いと、部下のウェルビーイングも高まりますから、管理職の健康度、幸福度を高める施策も有効です。

 

まず、現状を知ることから

ウェルビーイング経営を始める、最初の一歩は「現状を把握すること」です。

 

そこで活用いただきたいのが、ストレスチェックです。ストレスチェックの結果(集団分析)は、職場の状態を客観的に示すデータです。

社員が何をストレスだと感じているのか、何に働きがいを感じているのか。結果をもとにそれを分析し、何を改善し、何を伸ばせばいいのかを検討し、実践するのです。

社員の生活習慣や性格傾向まで調べることができるストレスチェックもありますから、上手に選んで社員の健康・幸福度向上に役立てていただきたいと思います。

ストレスチェックは、ウェルビーイング向上のヒントの宝庫です。

 

社員一人ひとりが「この会社を選んでよかった」と笑顔で働ける職場をつくること。それが、ウェルビーイング経営のゴールではないでしょうか。

 


参考:Bellet, C., De Neve, J-E., & Ward, G. (2019). Does Employee Happiness Have an Impact on Productivity? Saïd Business School Working Paper.