メンタルヘルス不調者対応の流れ

メンタルヘルス不調とは

令和6年度の「業務災害に係る精神障害に関する事案の労災補償状況」(厚生労働省)によると、請求件数は3780件、支給決定件数は1056件でした。業務上のストレスによって精神障害を患い、それが労災だと認定されたケースが、1056件あったということです。請求件数、支給決定件数ともに、年を追うごとに増えており、支給決定件数に関しては、2022年度からの5年間で73.68%増加しました。

 

労災でなくとも、労働者のメンタルヘルス不調は増加しています。

メンタルヘルス不調とは、過重労働、人間関係などのストレスが要因となり、気分の落ち込み、意欲の低下、不眠、集中力の低下などの症状が継続している状態を指します。代表的な疾患としては、うつ病、適応障害、不安障害などがあります。

メンタルヘルス不調に陥ると、業務効率も低下します。早期に気づいて適切に対応することで、回復を早め、深刻化を防ぐことができます。

不調のサインに気づく

そのために、まずは周囲の人が不調のサインに気づくことが大切です。

メンタル不調のサインは、行動面に先に現れることが多いです。例えば、以下のようなものがあります。

 

  • 遅刻・早退・欠勤が増える
  • ミスやもの忘れが目立つようになる
  • 口数が減る・表情が暗くなる
  • 身だしなみが乱れる
  • 仕事の質やスピードが落ちる

 

「いつもと様子が違う」と感じたら、まずは声をかけることが重要です。「最近、ミスが続いているね。いつものあなたとは思えないのだけど、何か困っていることはある?」といったように、「あなたはいつもと違う。心配している」という言葉をかけるのが有効です。

決してミスを責めないようにしましょう。

 


聴いて、つなぐ

声をかけたら、話を聴きましょう。心身の状態、何に困っているのかなどを、じっくり聴きます。

困っている人を目の前にすると、ついついアドバイスや解決策を提示したくなりますが、控えるようにしてください。なぜなら、不調気味のとき、人は「変化すること」を受け入れられないからです。アドバイスとは「あなた、今のままじゃダメだから変わりなさいよ」というメッセージです。疲れて元気をなくしているときに、そんなふうに言われたらどう思いますか? しんどいですよね。

 

ですから、不調者の話を聴くときは、「ただただ、黙って聴く」のが基本。気持ちに寄り添いながら、話を聴いていきます。ちなみに、弊社のラインケア研修などでは、不調気味の人の話を聴く練習をしてもらっています。

 

話を聴いて状況が把握できたら、業務の調整をします。いつも通り仕事ができる状態ではないですから、本人の負荷が減るよう、業務の調整をするのです。負担の大きい業務を一時的に軽減する、締め切りに余裕を持たせるなど、職場でできる現実的な配慮を検討します。周囲のメンバーの負荷が高まることになりますが、困ったときはお互い様です。協力を仰いで、皆で支える意識を高めてください。

 

もうひとつ、大事なことは、専門家につなぐということ。

症状が出ている、悩みが深い場合は、専門家の力を借りることが大事です。産業医、自宅や会社の近くの医療機関、カウンセラーへの相談を勧めましょう。中には、専門家に相談することに抵抗を持っている人もいますが、「困ったときは人に頼る」ことの大切さ、「あなたは大切なメンバーだから、元気になってほしい」ということを伝えることが重要です。 

休職への備えをしておく

症状が深刻な場合、主治医から休職を勧められることもあります。その際に慌てないよう、休職中のサポート体制や職場復帰の支援手順についてもあらかじめ整備しておくことが重要です。復職プログラムを作成していない職場もありますが、いざというときのために、作成しておきましょう。

 

メンタルヘルス不調への対応は、管理職一人が抱え込む問題ではありません。産業医、カウンセラー、人事担当者などとチームで連携しながら対応することが、当事者にとっても、組織にとっても最善の結果につながります。

誰でも不調になりうる現代。皆で支え合う意識を高めたいものです。