ラインケアとは、管理監督者が部下の健康に配慮しながらマネジメントを行うことを指します。厚生労働省が2000年に公表した「心の健康の保持増進に関する指針(メンタルヘルス指針)」では、以下の「4つのケア」の重要性が示されています。
・セルフケア(労働者自身によるケア)
・ラインによるケア(ラインケア)
・事業場内産業保健スタッフ等によるケア
・事業場外資源によるケア
この4つが一つのシステムとして機能することが重要なのですが、中でもラインケアは特に要といえます。なぜなら、メンバーの変化に最も早く気づけるのは、日々近くで接している上司だからです。
では、ラインケアとして具体的に何をすればよいのか。ポイントは4つあります。
・職場の問題点の把握と改善
・メンバーの事例性の把握と対応
・相談対応
・職場復帰支援
ストレス要因の少ない職場を整え、部下の健康状態を日頃から観察する。気になる部下がいるときだけでなく普段から相談に応じ、職場復帰する部下がいる場合は適切に対応する——これが、ラインケアの基本です。
とはいえ、今の管理職の99%はプレイングマネージャー。自分の業務を抱えながらチームをまとめ、目標を達成し、そのうえでメンタルヘルスケアまで担わなければならない。率直に言って、相当な負担です。
だからこそ、管理職が抱え込みすぎず、しかしやるべきことには確実に対応できるようになることが、現場でラインケアを機能させる鍵になります。その第一歩として有効なのが、「何をすればいいのか」を具体的に学ぶ研修です。
弊社で実施しているラインケア研修では、次の4つをポイントとしてお伝えしています。
【1】ラインケアの全体像
4つのケアの位置づけや、ラインケアの具体策について、まず全体像を押さえていただきます。「自分たちに何が期待されているのか」を理解することが、すべてのスタートです。
【2】メンタルヘルスの基礎知識
うつ病や適応障害といった精神疾患について、症状・経過・回復プロセスを正しく理解していただきます。この知識があるかないかで、部下への対応時の落ち着きがまったく変わります。過度に不安にならずに向き合うための、大切な土台です。
【3】部下の変化への気づき方と、声かけの技術
メンタル不調のサインは、どこに、どのように表れるのか。気づいたとき、どう声をかけ、どう話を聴けばいいのか。これは知識だけでは身につかない部分なので、ポイントをお伝えしたうえで、ロールプレイを通じて体得していただきます。
【4】専門家・相談窓口へのつなぎ方
ここが、実は最も大切なパートです。メンタル不調者が出た際、管理職がすべきことは「業務調整」であって、ケアそのものは専門家の役割。産業医やカウンセラーへ適切につなぐことこそが、ラインケアにおける管理職の重要な役割です。そして研修の最後に、私が必ずお伝えしていることがあります。
管理職が、必要以上に責任を感じる必要はありません。真面目な管理職ほど「自分が何とかしなければ」と抱え込み、結果として自身がメンタル不調に陥ってしまうケースが、本当に多いのです。部下を守るためにも、管理職自身を守るためにも、このメッセージは欠かせません。
研修は、実施して終わりではありません。むしろ、研修後のフォローアップこそが、行動変容の成否を分けます。
学んだ内容を職場で実践できているかを振り返る機会を設けること。定期的なフォロー研修を組み合わせたり、職場での実践事例を共有し合う場をつくったりすることも、非常に効果的です。
ラインケア研修は、管理職が「部下とチームを守る力」を養うための重要な機会です。そして同時に、管理職自身が「抱え込みすぎずに役割を果たす術」を身につける場でもあります。
適切な知識とスキルを持った管理職が増えることで、職場全体のメンタルヘルスは、確実に底上げされていきます。