· 

「休暇は損失」という思い込みが、組織を弱くする

日本の生産性は先進7か国で最下位。

働く人の8割が強いストレスを感じ、メンタルヘルス不調者は増加の一方です。

 

これは決して他人事ではありません。

私がこれまで約1000社を支援してきた中で、

働き方改革が「改革」どころか「改悪」になっているケースを数多く見てきました。

業務量は変わらないまま残業制限をして、

リーダーがメンバーの仕事を巻き取り、疲弊していく――そんな悪循環に陥っている企業が少なくないのです。

 

どうぞ、発想を180度転換してください。

 

「休暇は損失」ではなく、「休暇は未来への投資」なのです。

 

実際、国内には成功事例があります。

20年前に「残業ゼロ」を掲げたアパレル企業は19期連続増収増益。

ある老舗菓子メーカーは25年以上にわたり年次有給休暇取得率100%を継続しながら、

売上高は年々上昇しています。

建設業のある企業も、年次有給休暇100%取得を実現し、

残業時間を平均25時間から17時間へ削減。従業員のモチベーションも向上しています。

 

なぜ、休むと生産性が上がるのか。

「ヤーキーズ・ドットソンの法則」という、ストレスと生産性の関係を示したグラフがあります。

それが示すように、

適度なストレスこそが最高のパフォーマンスを生みます。

疲労が蓄積すれば生産性は下がる一方です。

戦略的に休暇を取り、疲労を回復させ、エネルギーをチャージすることで、常に高いパフォーマンスを維持できるのです。

 

さらに注目すべきは、休暇がもたらす組織へのメリットです。

米国の研究では、年間20日以上の休暇取得でバーンアウトのリスクが41%低下。

別の研究では、有給休暇の提供により離職率が35%低下というデータもあります。

「きちんと休める」安心感は、エンゲージメント向上、定着率向上に直結します。

そして何より、休暇は創造性とイノベーションを生み出します。

 

脳はリラックスしているときにひらめきを得やすくなります。

多忙なビジネスパーソンに不足しているのは、何もせずぼーっとする時間、感情を研ぎ澄まし美意識を高める時間なのです。

 

拙著『戦略的休暇』では、単なる休暇取得の推奨ではなく、

意識改革と仕組みづくりの両面から、休める組織への変革法を具体的にお伝えしています。

 

まずはリーダーが率先して休み、メンバーが安心して休める文化を作る。

その先に、強くしなやかな組織が待っています。

 

休まず働く時代は終わりました。

これからは、戦略的に休む企業が勝ち残る時代です。