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「休みたい」と言える良い加減な職場づくり

いいかげん(良い加減)に働くには、「ちゃんと休むこと」が欠かせません。

休まず働き続ければ疲弊して良い加減ではいられなくなります。

 

しかし、現実の職場ではどうでしょうか。

忙しい時期や人手不足の状況では、休むことに罪悪感を覚える部下が多いものです。

特に真面目で責任感の強い人ほど「自分がいないと迷惑をかける」と思い込み、無理を重ねてしまいます。

結果的に体調を崩したり、メンタル不調で長期休職につながったりするケースも少なくありません。

 

リーダーができる最もシンプルかつ重要なサポートは、「休んでもいい」「休みたい」と安心して言える職場の空気をつくることです。

とはいえ、ただ「休んでいいよ」と声をかけるだけでは十分ではありません。

部下が本当に安心して休める言葉には、ちょっとしたコツが必要です。

 

では、どんな言葉がけが効果的なのでしょうか。

 

1.「今は仕事よりあなたの体調を優先してほしい」

部下が疲れた様子を見せたり、明らかに無理をしていると感じたとき、まず大切なのは仕事よりも本人の健康を優先するメッセージを明確に伝えることです。

 

例えば、

「最近忙しかったから、疲れがたまっていない? 無理はしなくていいから、体調を優先してほしい」

「休むことで迷惑がかかることはないよ。ここはチームでカバーするから安心してね」

 

こうした言葉があると、部下は“自分が抜けても大丈夫なんだ”と感じ、余計な罪悪感を抱かずに済みます。

 

逆に、

「大丈夫? でも今は忙しいからね…」

のように、休むことが負担になるようなニュアンスを出してしまうと、部下は「やっぱり休めない」と感じてしまいます。

 

2.「あなたが元気でいることが一番の貢献だから」

真面目な部下ほど、“休むこと=職務怠慢”だと捉えてしまいます。

そんな人には、元気でいることが組織への貢献そのものだという価値観を伝えることが有効です。

 

「今のあなたの状態では100%の力は出せないよね。だから、ちゃんと休んでリフレッシュすることが、結果的にチームへの一番の貢献になるよ」

 

このように、休むことを“マイナス行動”ではなく“プラスの選択”として肯定する言葉がけが、部下の心を軽くします。

 

また、普段からリーダー自身が休暇を取りやすい雰囲気を示すことも大切です。

上司が一切休まず働き続けていると、部下も「自分だけ休むのは気が引ける」と感じてしまうからです。

 

3.「困ったときはいつでも相談してほしい」

休むことを許可するだけでなく、相談しやすい関係性をつくることも重要です。

 

「体調や家庭のことで気になることがあったら、遠慮せず相談してね」

「無理が続きそうなら、早めに教えてくれると助かるよ。できる限りサポートするから」

 

このように、リーダーが“いつでも相談していい”というスタンスを見せることで、部下は不安を溜め込みにくくなります。

結果的に、深刻な状況になる前にフォローができるのです。

 

4.言葉だけでなく行動でも示す

もちろん、言葉がけだけでは不十分な場合もあります。

リーダー自身が有給休暇を取る、会議や納期のスケジュールを無理のない範囲に調整するなど、休むことを後押しする仕組みや文化も必要です。

 

例えば、

有給を取得した人が不利益を被らないようにする

繁忙期でも、交代で休める仕組みをつくる

メールやチャットで「休暇中の返信は不要」と明言する

 

こうした具体的な行動が伴ってこそ、「休んでいい」という言葉が本当に意味を持つようになります。

 

部下が休むことをためらう職場は、一見すると“真面目で頑張る組織”に見えるかもしれません。

しかし実際には、無理が積み重なり、突然の休職や離職につながるリスクが高い職場です。

 

逆に、リーダーが「休むのは悪いことではない」と伝え、休みやすい空気をつくる職場では、メンバーが長期的に健康で働けるだけでなく、生産性やチームの柔軟性も高まります。

 

“休む=甘え”という古い価値観を手放し、休むことも含めて働きやすい環境を整えることが、これからの時代のマネジメントに求められているのではないでしょうか。