頑張り屋さんほど疲れてしまうパラドックス
企業でメンタルヘルス支援に携わる中で、私は一つの共通点を発見しました。
相談に訪れる女性の多くが、実は職場でも高く評価されている「頑張り屋さん」だということです。責任感が強く、丁寧で、周囲への配慮も欠かさない。
そんな素晴らしい女性たちが、なぜ心の不調を抱えてしまうのでしょうか。
答えは、その「真面目さ」にありました。完璧を求める気持ちが強すぎるあまり、自分自身を追い詰めてしまうのです
。「もっとできるはず」「みんなに迷惑をかけてはいけない」「弱音を吐いてはいけない」——こうした思考パターンが、知らず知らずのうちに心を疲弊させています。
働く女性が抱えやすい「完璧主義」と「罪悪感」
近年の調査では、働く女性の約7割が「完璧主義的傾向」を持っているという結果が出ています。
特に管理職や責任あるポジションに就く女性ほど、この傾向は顕著です。
完璧主義の背景には、女性特有の社会的プレッシャーがあります。
「女性だから」と見られることへの不安、家庭と仕事の両立への責任感、そして「できて当然」という周囲の期待。
これらが重なり合って、「完璧でなければ認められない」という思い込みを生み出しているのです。
さらに深刻なのは、休息や助けを求めることに対する罪悪感です。
「他の人は頑張っているのに」「私だけが弱いのでは」という思いから、限界を超えても頑張り続けてしまう女性が少なくありません。
「いいかげん=良い加減」という新しい視点
ここで提案したいのが、「いいかげん」という言葉の捉え直しです。
一般的に「いいかげん」は怠惰や無責任を意味する否定的な言葉として使われますが、本来は「良い加減」、つまり「適度」「ちょうど良い」という意味なのです。
良い加減とは、100%の完璧を求めるのではなく、80%の出来で満足する知恵です。
完璧を目指すあまり燃え尽きてしまうより、持続可能なペースで長く活躍し続ける方が、結果的により大きな成果を生み出せるものです。
「良い加減」で働くための実践方法
では、どうすれば「良い加減」な働き方ができるのでしょうか。具体的な方法を三つご紹介します。
1. 頼る勇気を持つ
「一人でやらなければ」という思い込みを手放し、同僚や部下に積極的に頼ることです。
完璧な指示を出そうとせず、「よろしくお願いします」の一言で任せる勇気を持ちましょう。
2. 手放す技術を身につける
すべてを自分でコントロールしようとする癖を見直します。
「今日は資料作成に2時間まで」「メールの返信は明日でも大丈夫」など、時間や質の境界線を明確に設定することが大切です。
3. 自分を許す練習
「今日は疲れているから早く帰ろう」「今回は80%の出来で十分」と、自分に優しい言葉をかける習慣を作ります。
自分を責める声が聞こえたら、「よく頑張っている」と声をかけ直してみてください。
「がんばらない勇気」が女性活躍には必要
真の女性活躍推進には、「がんばらない勇気」も必要です。
完璧を追求し続けて燃え尽きてしまうより、良い加減で長く活躍し続ける女性こそが、組織にとって真の財産となるのです。
人事の皆様には、女性社員が「良い加減」で働ける環境づくりを、そして働く女性の皆様には、自分自身に「いいかげん」でいる許可を与えていただきたいと思います。
完璧でなくても、あなたは十分に価値のある存在なのですから。